教育心理学研究
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図表の呈示及び完成が第二言語学習者の説明文読解に及ぼす影響
中級後半レベルの成人日本語学習者の場合
石井 怜子
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2006 年 54 巻 4 号 p. 498-508

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抄録

本研究は, 図表呈示と未完成図表の完成タスクが第二言語の読み手の説明文理解に及ぼす影響を検証した。第二言語学習者は, 中~上級になっても言語処理になお困難があり, 認知資源容量の制約から, 読む過程で結束的なテクスト表象を形成することが難しい。図表は第二言語の読み手の言語処理の負担を減じ, 外的表象として, テクスト中のアイデアの記憶保持とその統合を助けると予想される。実験参加者は成人中級後半日本語学習者40名で, 実験計画は図表呈示群・未完成図表完成群・統制群の被験者間要因計画である。約1800字の歴史説明文を用い, 母語による筆記再生を, テクスト構造における階層及びテクストの冒頭から終結部に至る全体把握の2つを指標にして分析した。結果は, 中位階層とテクスト後半部で, 呈示群が統制群より有意に多く再生した。図表の呈示は, 重要なアイデアを選び取り構造化するのを助けることが示唆された。他方, 完成群は上位のアイデアの再生が統制群より有意に低かった。図表完成タスクは, 言語の表層レベルの処理に終わるような場合には, 必ずしも理解を促進しないことが示唆された。

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© 日本教育心理学会
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