教育心理学研究
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自律的・依存的援助要請における学習観とつまずき明確化方略の役割
多母集団同時分析による中学・高校生の発達差の検討
瀬尾 美紀子
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2007 年 55 巻 2 号 p. 170-183

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抄録

本研究の目的は, 学習場面での援助要請について, その質を高めることの重要性を指摘し, 質に関連する要因とその関連の発達的変化を明らかにすることであった。質に関連する要因として, 学習観とつまずき明確化方略に着目して, 自律的援助要請, 依存的援助要請との関連を表したモデルを構成した。中学生 (N=235) と高校生 (N=257) を対象に質問紙を実施し, 構成したモデルに対して多母集団同時分析を行った。その結果,(1) 中学生では, つまずき明確化方略が学習観と自律的援助要請の関連を媒介するのに対し, 高校生では直接的な関連も示されたこと,(2) 中学生では丸暗記・結果重視志向と依存的援助要請は直接的な正の関連を示すのに対して, 高校生では関連が見られなかったこと, そして,(3) 高校生では, 丸暗記・結果重視志向と自律的援助要請は直接的な負の関連を示すのに対し, 中学生では無関連であったこと, が明らかになった。また, 中学から高校にかけての援助要請の質の発達は,「依存的援助要請の減少」という観点から捉えられることが示唆された。以上の結果に基づき, 援助要請を促進する際の教育実践的示唆について論じた。

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© 日本教育心理学会
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