教育心理学研究
Online ISSN : 2186-3075
Print ISSN : 0021-5015
ISSN-L : 0021-5015
幼児におけるジェスチャーの視点
認知的役割取得能力との関連
片山 顕裕針生 悦子
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 55 巻 2 号 p. 266-275

詳細
抄録

発話に伴うジェスチャーには, 主観的視点のものと客観的視点のものの2種類がある (Özyürek, 2000)。これまでの研究で, 大人では聞き手の理解状態に配慮する時には客観的視点のジェスチャーが増え (藤井, 2000), 発達的には年齢が高くなるほど客観的視点のジェスチャーが増えること (藤井, 1999), などが指摘されてきた。子どもは, 発達に伴い, 聞き手がどれだけのものを見せられればどれだけのことを知ることができるかが分かるようになり, それで, ジェスチャーにおいても客観的視点のものをより多く産出するようになるのだろうか。これが本研究の仮説であり, 対象児は幼児43名であった。幼児は, 認知的役割取得課題によって, 聞き手の理解状態に敏感なレベル (レベル2) と, まだあまり敏感でないレベル (レベル1) とに分けられた。結果として, レベル2の子どもでは, レベル1の子どもに比べ, 客観的視点のジェスチャーが多いことが明らかになった。ここから, 子どもが他者の認知状態をモニターする能力と, 客観的視点のジェスチャーを産出することとの間には, 関連があることが示唆された。

著者関連情報
© 日本教育心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top