教育心理学研究
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保護者はクライエントから子どもの援助のパートナーへとどのように変容するか
母親の手記の質的分析
田村 節子石隈 利紀
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2007 年 55 巻 3 号 p. 438-450

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抄録

本研究の目的は, 母親がクライエントから子どもの援助のパートナーとなる心理的変容過程のモデルを生成することである。母親が自主的に記録していた手記を分析データとしたが, 手記には, 子どもが1歳から14歳までに起こった出来事や, その出来事に対する自分の捉え方, スクールカウンセラーとのやりとりや母親の心理的な変化について, ありのままに記述されていた。手記は修正版グランデッド・セオリー・・アプローチを用いて分析され, 20個の概念から10個のカテゴリーを見出し, 10個のカテゴリーはさらに4個の上位カテゴリーにまとめられた。その結果, 母親の心理的変容過程はIV期に分かれた。1期において子育てにおける疎外感, 無力感, 徒労感を抱いていた母親は, II期においてSCとの出会いにより心理的な揺れを伴った軌道修正の過程を経た。この過程を経て母親は, クライエントから子どもの援助のパートナーとして心理的に変容し, III期においてパートナーとして援助チーム会議に参加することで親役割の充実がはかられ, IV期においては母親自身の将来への展望をもつことが示唆された。カウンセリングニーズとコンサルテーションニーズの視点からも考察を加えた。

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© 日本教育心理学会
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