教育心理学研究
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就学前児の社会的スキル
コホート研究による因子構造の安定性と予測的妥当性の検討
高橋 雄介岡田 謙介星野 崇宏安梅 勅江
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2008 年 56 巻 1 号 p. 81-92

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抄録

社会的スキルは, 他者との関係を円滑に進めるための技能である。就学前期における社会的スキルの獲得の失敗やその非定型的な発達は, のちの問題行動や不適応, 学業成績の低さなどの予測要因となることが多くの先行研究により明らかになっている。しかし, こうした重要な発達段階である就学前期の子どもたちを対象とした社会的スキルの測定ツールは国内においてほとんど提案されていないのが現状である。そこで本研究では, 全国規模のコホート調査を行い, 就学前児を対象とした社会的スキルの個人差を適切に測定できる尺度を開発した。作成された就学前児用社会的スキル尺度は欧米の先行研究で繰り返し確認されている協調・自己抑制・自己表現の3因子構造を持ち, 高い内的一貫性及び経時的安定性を示した (研究1)。また, 外的基準として問題行動と自閉傾向を縦断的に測定して本尺度との関連を分析した結果, 提案する尺度は十分な併存的妥当性及び予測的妥当性を持つことが確認された (研究2)。本尺度によるスクリーニング及びそれに基づいた早期介入は, 就学前期以降における子どもたちの健全な発育に寄与するだろう。

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© 日本教育心理学会
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