教育心理学研究
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体育学習の不振の原因について
各教科教育法に関する教育心理学的研究XI (体育科)
中野 佐三
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1969 年 7 巻 4 号 p. 42-48,80

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抄録

(1) この研究は, 体育学習不振の生徒について, その不振原因を探す目的で行なわれた。
(2) 東京都内S中学校の各学年2学級ずつを選び, この学級で体育科の成績評定の下位のものを最下位から5名, したがつて各学年10名ずつ計30名をとり, これを体育学習不振の生徒とし (該当生徒とよぶ), 他方, それら学級で体育科の成績評定の上位のものを最上位から5名, したがつて各学年10名ずつ計30名とり, これを該当生徒と比較する生徒とし (比較生徒とよぶ), 前者が後者に比し, 身体・生理的条件, 知能的条件, 情緒・性格的条件においてどれほど劣つているか, また, 教師の指導の方法・技術によつていかに不利を負わされているか, を調べた。
(3) その結果は, およそ, つぎのようである。イ身長, 体重の平均以下であるもの, 病弱であるもの, また「動作がのろい」「運動ののみこみがわるい」と自己判断するものは, 比較生徒よりも該当生徒の方に, より多い。
ロ知能の平均以下のものは, 比較生徒よりも該当生徒の方により多く, かつ, このものは体育科以外の教科の成績も劣悪である。
ハ「おくびようである」「はずかしがりやである」「すぐにあがつてしまう」などと自己判断するものは, 比較生徒よりも該当生徒の方に, より多い。
ニ教師の指導の方法・技術によつてより多く不利を負わされているものは, 該当生徒の方である。学びたくない運動種目たとえば, マット運動, 鉄棒, を学ばなければならないはめにおかれているものは, 該当生徒の方により多いのである。
(4) 上記の結果から, 体育学習不振の原因を考えると, それとして, 身体・生理的条件, 知能的条件, 情緒・性格的条件において劣つていること, 教師の指導の方法・技術によつて不利を負わされていることなどをあげることができる。しかも, それぞれは, それのみで決定的な原因になつていることもまつたくないではないが, ほとんどの場合, 相互にからみあつて, 不振の原因になつているといわなければならない。

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