てんかん研究
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症例報告
発達性読み書き障害が明らかになった後頭葉てんかんと心因性非てんかん発作の併発患者
廣實 真弓堀井 大輔曽根 大地渡邊 さつき岡崎 光俊渡辺 裕貴
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2016 年 34 巻 1 号 p. 31-39

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抄録

後頭葉てんかん(occipital lobe epilepsy;OLE)と心因性非てんかん発作(psychogenic nonepileptic seizure;PNES)を併発した患者の診断過程で、発達性読み書き障害(developmental dyslexia;DD)が明らかになった患者を経験した。症例は20歳、女性、右利き。16歳から意識消失発作を繰り返し、X年てんかんの診断と発作の軽減を目的に入院し、ビデオ脳波モニタリングを含む精査を受けOLEおよびPNESと診断された。流暢に話すが、多彩な言語症状を訴えたため、言語を含む神経心理学的評価を実施した。Rey複雑図形の模写や写字では視覚性の問題は検出されず、後頭葉てんかんの言語機能への影響については明らかでなかった。言語検査の結果からDDがあることが示された。本症例は当院受診までDDの診断がされていなかったため、学童期から漢字を覚えられないことや音読ができないことなどの学習の遅れは本人の怠惰さのせいだと誤解され、家族からは過度の期待をされており両親の期待にこたえようにもこたえられず葛藤していたことがPNESの一つの要因になっていたと推察した。DDの早期発見には教育と医療との連携が不可欠である。就学前健康診断で問題が疑われた子供については、就学後も学校と小児科をはじめとする医療専門職とが連絡会を持つなどの継続的な連携強化が重要である。またDDは就学後顕在化することがあるため言語聴覚士が学校を巡回できるような体制作りも重要であろう。てんかんと学習障害が合併することは知られており、学童期に問題が見過ごされた場合でもてんかん診療開始時から神経心理学的検査を実施することが言語障害や認知機能の障害の早期発見につながるのではないかと考えた。そのためには短時間で実施できるスクリーニング検査の開発が重要である。

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© 2016 日本てんかん学会
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