2017 年 35 巻 1 号 p. 55-65
本稿は、てんかん患者の臨床的背景の違いに着目し、薬物治療がもたらす社会的便益や現在の治療満足度について比較検討することを目的とした。社会的便益は自発的支払意思額(willingness to pay:WTP)を指標に検討した。抗てんかん薬を服用中の患者及び患者家族を対象としたインターネット調査を実施し932人の有効回答を得た。望ましい状況が実現できる新しい治療のために現在の自己負担額に対して追加で支払える金額について患者背景別にみると、「発作の頻度が1日に数回」の群の26,214円/月が最も高く、ついで「発作の頻度が1週間に数回」の群の23,438円/月、「抑うつ」を合併する群の22,553円/月、「てんかん発作初発年齢が20歳~40歳未満」の群の19,645円/月であった。現在の薬物治療への満足度は、発作頻度が多い又は合併症を有している患者において全体的に低い傾向がみられた。