てんかん研究
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総説
島葉てんかん
萩原 綱一
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2025 年 43 巻 1 号 p. 41-74

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抄録

要旨:シルビウス裂奥深くにある島葉の機能や発作症候の理解には非常に長い年月を要した。側頭葉切除後の術中脳波しか島葉を探索する術が無かった1950年代、残存する棘波を認めたり、皮質電気刺激で内臓症状や体性感覚症状が誘発されたりしていた。しかし、実際に島葉から生じる発作が確認されたのは定位的頭蓋内脳波(SEEG)の技術向上により島葉に電極留置が可能になった1990年代であった。それから島葉発作の報告は急速に増え、多様な機能と豊富な解剖的・機能的結合により多彩な発作型を呈することが分かった。痛覚や喉頭狭窄などの島葉に特異的な症状の他に、他葉のてんかんと間違われやすい感覚・内臓症状もあり、さらに、島葉外への伝播による症状(特に運動亢進発作)で島葉の症状がマスクされる場合も多い。病変を認めない側頭葉てんかん、前頭葉てんかん、ないし頭頂葉てんかん疑いの症例では、島葉てんかんの可能性に留意する必要がある。

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