実験社会心理学研究
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資料論文
個人間の危害行動が集団間紛争へと拡大するとき:一時集団における集団間代理報復の萌芽的生起
縄田 健悟山口 裕幸
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2011 年 51 巻 1 号 p. 52-63

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抄録

集団間代理報復とは,一方の集団の成員が他方の集団の成員へと危害を加えたときに,それを知った被害者と同集団の成員が,加害者と同集団の成員に対して報復を行うという現象である(Lickel, Millar, Stenstrom, Denson, and Schmader, 2006)。本研究の目的は,初対面の一時集団においても,集団間代理報復の生起が見られるか否かを検討することである。本研究では,勝者が敗者に罰金を与えるというルールの一対一対戦ゲーム場面による実験室実験を行った。前回の対戦の結果として,危害明示条件では,外集団成員が内集団成員に罰金を与えたという情報を提示した。危害不明条件では,危害明示条件と同様の罰金の情報を提示したが,誰が誰に危害を与えたかは不明であった。以上の情報を提示した後に,当初の危害の加害者本人ではない外集団成員に対して罰金を与えてもらい,その大きさを条件間で比較した。その結果,実験1,実験2ともに,危害明示条件では,危害不明条件よりも有意に大きな罰金額が見られた。さらに,実験2では,罰金額が報復動機づけに基づいていることが示された。ただし,報復動機づけの平均値は高いものではなかった。以上より,実験室における一時集団であっても,集団間代理報復の萌芽的形態が見られた。

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© 2011 日本グループ・ダイナミックス学会
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