実験社会心理学研究
Online ISSN : 1348-6276
Print ISSN : 0387-7973
ISSN-L : 0387-7973
原著論文
社会的迷惑行為の抑止策としての好意の提供
油尾 聡子吉田 俊和
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 53 巻 1 号 p. 1-11

詳細
抄録

社会的迷惑行為の抑止方法には,禁止や制裁といった方法が取られることが多い。しかし,これらの方法は迷惑行為者の反発心を喚起させるため,長期的にみて抑止効果が弱い。本研究は,これらの方法の問題点を解決すると考えられる報酬による社会的迷惑行為の抑止効果を実証したものである。具体的には,社会的迷惑行為の行為者に対して認知者が好意の提供(親切な行動)を行うことによって,そうした行為が抑止されるのかどうかを検討した。好意を提供された迷惑行為者は,“好意を与えてくれた他者に対して,同様のお返しをしなければならない”という互恵性規範が喚起され,社会的迷惑行為を抑制すると予測された。大学生153名を対象とした実験室実験の結果,飲み物を振る舞ってもらうことを通して好意を提供された迷惑行為者の中で,特に,互恵性規範が喚起されやすかった人々は,社会的迷惑行為を抑制するよう動機づけられることが示された。最後に,好意の提供による社会的迷惑行為の抑止方法は,迷惑行為者と迷惑認知者の感情的反応と関係性の良好さをも配慮した長期的に有効可能性の高い方法であることが考察された。

著者関連情報
© 2013 日本グループ・ダイナミックス学会
次の記事
feedback
Top