実験社会心理学研究
Online ISSN : 1348-6276
Print ISSN : 0387-7973
ISSN-L : 0387-7973
原著論文
態度の両価性が行動意図の形成に及ぼす影響―子宮頸がん検診の受診を対象とした検討―
平島 太郎土屋 耕治元吉 忠寛吉田 俊和
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 54 巻 1 号 p. 1-10

詳細
抄録
本研究の目的は,子宮頸がん検診の受診を題材とし,態度の両価性が行動意図の形成に及ぼす影響を検討することであった。先行研究では,態度の両価性が,SD法で測定されるような全般的な態度と行動意図との一貫性を低下させることが報告された。従来の研究では,両価的な態度は時間的に不安定であるため,態度と行動意図が一貫しなくなるという説明がなされてきた(不安定仮説)。しかし,先行研究における理論的・方法論的な問題により,不安定仮説の妥当性は明確ではなかった。そこで本研究では,計画的行動理論の諸要因を加えた縦断調査を行い,不安定仮説を検証した。女子大学生を対象とし,子宮頸がん検診の受診に関する調査を実施した。その結果,子宮頸がん検診の受診に対する態度の両価性が低い群では,態度が受診意図を予測したが,態度の両価性が高い群では,態度が受診意図を予測していなかった。しかし,2時点間の全般的な態度の不安定性を検討した結果,態度の両価性が高い方が態度が不安定になるという,不安定仮説を支持する結果は得られなかった。また,態度の両価性が高い群では,主観的規範と行動統制感が受診意図を予測した。これらの結果から,態度の両価性が態度と行動意図との一貫性を低下させる現象について,不安定仮説の限界が示唆された。最後に,不安定仮説以外のメカニズムの可能性と,子宮頸がん検診の受診促進について考察した。
著者関連情報
© 2014 日本グループ・ダイナミックス学会
次の記事
feedback
Top