実験社会心理学研究
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原著論文
持つものの柔らかさ・硬さによって生じる皮膚感覚が対人認知と自己認知に及ぼす効果
沼崎 誠松崎 圭佑埴田 健司
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2016 年 55 巻 2 号 p. 119-129

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抄録

身体感覚が社会的知覚や行動に影響を与えることが近年多くの研究で示されている。本研究では,持つものの柔らかさ-硬さによって生じる皮膚感覚が対人認知と自己認知に及ぼす効果を検討した。身体的温かさが性格的温かさと連合して表象していることを示す研究とHarlow(1958)の研究から,柔らかさ-硬さ感覚が性格的温かさ-冷たさと連合して表象されていると予測した。女性的ポジティブ特性,女性的ネガティブ特性,男性的ポジティブ特性,男性的ネガティブ特性の自己評定をあらかじめしていた21名の女子大学生が実験に参加した。参加者は,対人認知課題及び自己認知課題を行う間,柔らかい軟式テニスボールか硬い針金のボールを握り続けるように教示された。結果として,他者認知では,柔らかいボールを持った参加者は硬いボールを持った参加者に比べ,刺激人物が女性的ポジティブ特性を持っていると評定し,刺激人物に好意を示した。一方,自己認知では,柔らかいボールを持った参加者は硬いボールを持った参加者に比べて,男性的ネガティブ特性を持っていると評定するようになることが示された。これらの結果は,持つものの柔らかさ-硬さによって生じる皮膚感覚が,対人認知と自己認知に対して,それぞれ異なった影響を与えることを示唆する。


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© 2016 日本グループ・ダイナミックス学会
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