実験社会心理学研究
Online ISSN : 1348-6276
Print ISSN : 0387-7973
原著論文
現代社会のアクションリサーチにおける時間論的態度の問題
宮本 匠
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56 巻 (2016-2017) 1 号 p. 60-69

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抄録

本稿は,アクションリサーチの前提中の前提である,価値志向的であること,よりよい状態を目指そうという態度が,ときにアクションリサーチの現場を閉塞した状況にしてしまうことを指摘したうえで,それがいかに回避され得るのかを考察したものである。アクションリサーチにおけるベターメントの達成は,当事者の内的な世界における「身体の水準」が,共同体における他者との出会いによって,「言語の水準」へと顕在化することとして捉えることが出来る。新潟県中越地震の復興支援の事例では,ベターメントにつながるような「身体の水準」の顕在化に寄与するかかわりは,何らかのよりよい状態に向けて現在を変革する「めざす」かかわりではなく,「変わらなくてよい」ことを前提とした「すごす」かかわりであった。よりよい状態を「めざす」アクションリサーチにおける困難は,近代的な自我がいきつく〈時間のニヒリズム〉からとらえることが出来る。そのニヒリズムを基礎づける「インストルメンタル」な時間態度がどのように生まれたのかをふりかえると,それを保持したまま,なお現在のうちに生の充足を感受する「コンサマトリー」な時間態度が成立可能であることが理解できる。この「コンサマトリー」な時間態度の獲得が,現代社会のアクションリサーチの困難を回避する方策である。

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© 2016 日本グループ・ダイナミックス学会
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  • 電子ジャーナルでカラー図版に対応します

    実社心研は紙媒体とJ-STAGEから提供しているPDFの2つで刊行していますが,これまでいずれもカラー図版に対応していませんでした.著者最終稿としてカラー図版が提供された場合も,グレースケールにして掲載していました.これは,紙媒体だとカラー印刷のコストが大きいことによるものですが,電子ジャーナルであればそのコストはかなり小さくなります.そこで,著者のご希望に応じて,電子ジャーナルについてはカラー図版に対応することにしました(紙媒体は今後もグレースケール化します).ただし,対応には実費(現状で図版1点につき800円(税抜))がかかりますので,これは著者にご負担いただきたく存じます.
    執筆・投稿規程の最後にある「内規」に,「電子ジャーナルにおいては,論文中の図表をカラーで掲載することができる。ただし,希望する場合は当該論文の著者が実費を学会に支払うこととする。」という事項を付け加えたので,ご確認下さい.
  • 2017年10月 『実験社会心理学研究』が変わりました

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