論文ID: 2405
セルフディスタンシングとは,自分を出来事から切り離し,第三者の視点を用いて出来事を理解しようとする過程を指す。これまでの先行研究は,セルフディスタンシングが感情調節や自己制御に有効であることを実証してきた。また,文化比較研究によって,内省におけるセルフディスタンシングの容易さやその程度に文化差が存在することが示唆されてきた。しかし具体的にその文化差がどのような文化的要因と関連しているかはまだ解明されていない。本稿ではまずセルフディスタンシングの定義やメカニズムなどの理論的枠組みを述べ,そして感情調節・自己制御・行動変容におけるセルフディスタンシングの効果に関するこれまでの実証研究を概観する。最後に,文化心理学の観点を含めることによるセルフディスタンシング研究の今後の展望を論じる。