教育・社会心理学研究
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集団効率と成員満足感におよぼす構造特性とリーダーシップ特性との交互作用
狩野 素朗
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1970 年 9 巻 2 号 p. 127-144

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抄録

集団の課題解決能率, および成員の作業満足感におよぼすリーダーシップ要因と構造特性要因の交互作用を検討した。あわせて成員の課題遂行志向的動機づけ, 集団維持 (人間関係) 志向的動機づけ, リーダーのリーダーシップ行動についての成員の評価作業構造についての評価におよぼす両要因の効果に関する吟味を行った。
リーダーシップ要因としてはP型, M型, およびPM型の3水準, 構造要因としてはcom-con型とwheel型との2水準を用いた。
実験には5人集団を用い, その中の1人が実験条件にしたがったリーダーシップ行動を演じた。実験課題は「漢字構成ゲーム」で, 成員間に緊密な情報の交換, 調整を要するものである。
結果はつぎのとおりである。
1) 課題解決時間につき, 全体を通じて構造要因の主効果がみられ, com-con構造の方が所要時間は少ない。その結果については課題の特性との関連から考察された。
2) 課題解決時間におよぼすリーダーシップ要因と構造要因との交互作用がみとめられ, com-con構造では早い順にPM, M, Pであるが, wheel構造ではP, PM, Mの順である。P型とM型のみに着目すると構造の水準によって順位が逆転している。この結果については, 構造特性が与える成員の行動についての役割期待と, 現実のリーダーシップ行動とのcogruencyの観点から考察された。
3) 試行のくりかえしによる課題遂行能率についての練習効果がみられるが, P的リーダーシップは練習効果を促進する機能を果していると考えられる。
4) 作業満足感については総じてリーダーシップ要因の主効果のみがみいだされ, 高い順にPM, M, Pである。この結果はリーダーシップとモラールに関する従来の研究結果と一貫したものである。
5) リーダーのリーダーシップ行動についての成員による評価に関しては, リーダーシップ要因の主効果, および構造要因の主効果がみとめられ, それぞれPM, wheel型のばあいにおいて高い。
6) 作業構造についての成員による評価では, リーダーシップ要因の主効果がありPM型において高い。

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