実験社会心理学研究
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連合形成における取引き行動 (I)
金児 暁嗣
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1972 年 11 巻 2 号 p. 109-126

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抄録

連合形成に関する理論は, 心理学的立場からのものと, ゲーム理論的立場からのものとに分けられるが, ゲーム理論からの予測を可能とする状況を検討するため, 成員の間に無制限の取引き行動が許され, 第3者の介入の余地を十分与えた。
被験者は中学2年生男子で, 3名をもって1集団が構成され, 計15集団が用いられた。使用された3人集団の型は, CaplowによるType II (3-2-2), Type V (4-3-2), Type VIII (4-2-2) で, 各集団は3つのTypeについて6回のゲーム, 計18回のゲーム盤によるゲームを行なった。成員に与えるウェイトはランダムとされた。その結果, 次のことが明らかにされた。
1. Type II, Vにおいては, Caplowの予測が確証され, プレイヤーは最初のウェイトについての知覚に基づいて行動した。しかし, Vinacke & Arkoff (1957) の結果よりも偶然の範囲に近かった。
2. Type VIIIでは, 2-2連合が最も多く形成され, Caplowの予測は確証されなかった。
3. 連合しようとの最初の申し出をしたプレイヤーは, Type II, Vでは強者と弱者の間で差がみられず, Type VIIIでは, 弱者の申し出の方が強者よりも多く行なわれた。一方, 申し出を受けたプレイヤーは, Type II, Vにおいては弱者の方に多くみられ, Type VIIIでは強者と弱者の間に差はなかった。
4. 強者から弱者へ, または, 弱者から強者への連合しようとの最初の申し出における報酬の分配については, 強者と弱者の間では差がなく, Typeによるちがいがみられた。即ち, Type IIでは等分配, Type VIIIでは比例分配の申し出が多くみられた。
5. 最終的な連合形成における報酬の分配については, 従来の結果よりも比例分配が少なかった。そして, Type II, VIIIの弱者間の連合では, 非・等分配がかなり出現した。
6. 最初の申し出において一致がみられた組について, その申し出が最後まで持続されたか否かを調べたところ, 資源に差異がある組ほど持続されていなかった。
7. 取引きにおいて交わされたペーパー・コミュニケーションは, Type VIIIが最も少なかった。

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