実験社会心理学研究
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自然状況における原因帰属, 共感傾向, 当事者行動の評価に関する実験的研究
新垣 和子
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1976 年 16 巻 1 号 p. 27-39

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抄録

本研究の目的はポジテイブ, ネガテイブ両事態における被験者の原因認知, 共感傾向, 当事者行動の評価方法を検討することであった。大学1年生361人を対象に, 両事態を自然場面に限定し, 各事態の強度を2レベルに, そして当事者の性格特性要因を3レベルに分けて2×3×2×2のデザインで実験が行なわれた。まず, 被験者の性格特性と発生事態に関する情報が提示され, その後それを基にして被験者に, (a) その事態の原因が何に帰されるか, (b) その事態をどの程度自分自身にもおこる事態として予測するか, そして (c) 当事者の行動をどう評価するかの三側面を11段階 (0~10) で評価させた。さらに, 被験者自身の日頃の行動傾向について自己評価させ, 上記の三側面との関係をも検討した。その主な結果は次の通りである。
(1) ポジテイブ事態の原因は外部要因に帰され, ネガテイブ事態のそれは内部 (当事者) に帰されやすい。
(2) (1) の原因認知傾向は当事者の性格特性要因によって移行する。
(3) 事態の重大さの面から, Iは些事の方が, Eは大事の方が高い。
(4) 事態の発生原因を男性は外部要因に, 女性は内部要因に帰しやすい。
(5) 当事者の性格特性と観察者の共感傾向とは直接的関係をもつ。
(6) 事態の正負と観察者の共感傾向, 及び当事者行動評価とは正比例的関係を示す。
(7) 男性より女性の方が最悪状態では共感傾向が高く, 最良状態では低い。
(8) 観察者による当事者の行動評価は当事者の性格特性と正の関係をなす。
(9) 自己評価の高い者は事態の発生原因を個人内部に, 低い者は外部に求める傾向がある。
(10) 観察者の自己行動評価の正負と当事者行動の評価傾向とは逆比例的関係をなす。
本研究では, 自然状況に限定したことや, 情報提供方法等による被験者の状況関連性の認知度の問題, 被験者自身の行動評価のための尺度構成や性差に関する状況構成の問題等があり, 今後研究をさらに進めるにあたってはこれらの点を再検討していく必要があると考える。

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