実験社会心理学研究
Online ISSN : 1348-6276
Print ISSN : 0387-7973
ISSN-L : 0387-7973
クラスターおよびパス解析による従業員の転職意図と関係する職務態度要因の分析
古川 久敬
著者情報
ジャーナル フリー

1976 年 16 巻 1 号 p. 8-16

詳細
抄録

これまで, 組織体従業員の転職予測に関して, 数多くの研究がなされてきた。それらは, 一貫して職務満足度と従業員の転職とが, ネガティブに関係することを示してきた。
しかし, これらの研究は, あるひとつの変数が転職とどう関係するかを並列的に分析しているにすぎず, 多くの変数を同時に考慮し, かつ, それらの変数相互の関係を分析, 議論することはなかった。
本研究では, 従業員の転職意図は, 数多くの職務態度変数によって規定されるという考え方に基づき, それら変数相互の関係を分析した。これは, 多変量解析法のひとつの手法である階層的クラスター解析とパス解析を併用することによって行なわれた。
鉄道線路の保守作業に従事する男子従業員297名を対象として, 33の職務態度要因が, 彼らの転職意図といかなるパターンで関係しているかが分析, 吟味された。
結果は, 転職意図ともっとも強く関係している職務態度要因は, 職場の魅力, あるいは同僚規範など人間関係的要因であることを示していた。
また, かかる結果に基づき, 従業員の転職行動を分析する上で, 変数相互の因果モデルを構造化しうる階層的クラスター解析およびパス解析の有効性が論じられた。
最後に, 今後, 従業員の転職に関する研究を進めるに際して考慮すべきいくつかの方法論的問題についても議論された。

著者関連情報
© 日本グループ・ダイナミックス学会
前の記事 次の記事
feedback
Top