実験社会心理学研究
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2人間コミュニケーションにおける言語活動性の構造
大坊 郁夫
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1977 年 17 巻 1 号 p. 1-13

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抄録

2人間コミュニケーション事態における言語活動性の構造を, 2人間の接触の進行過程において, 時系列的な諸々の指標および性格特性との関連において検討するのがこの報告の目的である。
MASによって規定される高・中・低不安者群の3群それぞれ24名計72名の女子学生を被験者とし, 非対面場面において, すべての2人組み合せ計6通りを構成し, 会話実験を行なった。24分間1セッションを日を変え, 4セッション実施したうち, 接触の初頭 (セッション1) と接触の最も進行したセッション4の記録を分析した。
時系列的指標としては, 時系列的に1次の4種の状態 (同時沈黙, 同時発言, 一方の単独発言および相手の単独発言) を基本とし, 3次状態までを含め, さらに, 個体の単独発言と2人同時発言状態の頻度の和とその合計時間を加えた。あわせて, 個体のMAS, MPIのE, N得点, および2人間の得点差を指標値とし, 合計36指標を用い, 因子分析, クラスター分析を施した。
言語活動性の因子的構造としては, 両セッション共通に, 2人同時・共同的な一般活動性, 会話中断による非流暢一流暢性, 個体の一般的活動性, 相手の活動性の因子が得られた。セッション4では, 因子構成の指標に若干の変化のあること, さらに, 沈黙後発言因子が明瞭に独立していることが知られた。また, 性格特性因子は, 時系列的指標群と独立して抽出された。
指標間の関連から, 個体の発言活動は, 二重の側面を有しており, 個体の一般的活動性では接触の進行に伴ない正の相関度が減少し, 負の相関さえ示すに至るが, 沈黙後発言の指標では正の相関が保持されている。この点に関しては, 正の同調傾向のみならず, 負の同調傾向の存在が認められた。
これらの結果から, 標準面接場面に比べ, 事前の役割規定のない2人間コミュニケーションにおける言語活動性の構造は, 対人接触機会の程度に相応する力動性があり, かつ, 言語活動性は単一の概念ではないことが知られた。また, 不安水準の高低による対構成によって, 言語活動性構造の相違が認められ, 性格変数との関連が考えられた。

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