実験社会心理学研究
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集団内処理情報の量によるコミュニケーション・ネットワークの効果性の変動に関する研究
狩野 素朗
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1977 年 17 巻 1 号 p. 50-59

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抄録

課題解決集団におけるコミュニケーション・ネットワークの効果性は, 課題の質的特性は同一であっても, 課題解決に必要とする情報の量によって変動するであろうという仮説の検証を試みた。課題としてはLeavittタイプの課題を用い, 1つのカードに使用する記号の数を操作することによって情報量多条件と少条件の2水準を設定した。ネットワーク条件としては5人集団による集中ネットワークとしてwheel, 非集中ネットワークとしてcircleの2水準を用い, 情報量条件とネットワーク条件による2×2の各条件につき, くりかえし15回の試行を行なった。
結果は解決所要時間について情報量少条件ではwheelが, 多条件ではcircleが速く, この交互作用は有意であった。このことは集中構造のもつ中心位置への過剰情報集中性と中心者依存性のもつ短所, および非集中構造のもつ分散性と部分的解の段階的統合という長所が, 情報量が多い場合において顕現化したものと考察された。このことにより, ネットワークの効果性と課題特性との関連につき, 従来からの課題の質的特性との適合という説明原理とは別に, 質的特性は同一でも情報の量による効果性の変動が存在するものであること, そして, 単純課題ではwheelが効果的であるとする従来の知見は, それが情報量が少ない場合についてのみ妥当するものであることが示された。
また作業満足感については情報量の多少にかかわりなく, ネットワークとその中における位置の主効果が認められ, 満足感や意欲について作業集団内におけるコミュニケーション関係の重要性を示すものとして考察された。

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