実験社会心理学研究
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自己開示の対人魅力に及ぼす効果 (2)
開示内容の望ましさの要因に関する検討
中村 雅彦
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1986 年 25 巻 2 号 p. 107-114

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抄録

本研究の目的は, 自己開示内容の望ましさが, 対人魅力にどのような効果を及ぼすのかという問題について検討を行うことであった。仮説によれば, 開示内容がきわめて自己誇示的あるいは自己卑下的であるときには, 開示者に対する魅力は減少し, 自己誇示的内容と自己卑下的内容の占める割合が均衡している場合に, 開示者に対する魅力は増大するであろうと予測された。
50名の女子短大生が実験に参加した。被験者は, VTRに映し出される2人の女性の相互作用場面を見て, その中の聞き手の立場から開示者に対する魅力を評定した。
実験の結果, 得られた知見は次の通りである。
1. 対人魅力尺度に関する結果は, 自己開示の望ましさは, 対人魅力に“逆U字型”効果を及ぼすことを明らかにした。
2. 印象形成尺度を因子分析した結果, “力本性因子”と“誠実性因子”が見出された。各々の因子得点を分散分析してみると, 対人魅力尺度に関する結果と同様に, 自己開示の望ましさの“逆U字型”効果が見出された。ただし, 両因子得点がピークになる望ましさの条件には相違がみられた。
以上の知見は, 仮説を支持するものであった。自己開示の望ましさには, 開示者に対する評価や魅力を正から負に転じさせる“魅力域”とでも呼べるものが存在することが示された。

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