実験社会心理学研究
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リーダーシップ行動の恒常性と変容に関する実証的研究
三隅 二不二岩井 紀子
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1986 年 25 巻 2 号 p. 95-106

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抄録

本研究は産業組織体の管理・監督者のリーダーシップ行動の恒常性に対して人事異動が与える影響を検討したものである。とくに異動前と異動後の職務内容の類似性ならびに職場異動の要因がもたらす効果に着目した。
2つの銀行を対象として, 約1年の間隔をおいて連続5回 (B銀行では6回) にわたって, 三隅 (1970) の開発したリーダーシップPMサーベイを実施した。A銀行では565名のリーダーの資料が, B銀行では1, 489名のリーダーの資料がえられた。各リーダーは平均6~7名の部下から評定されていた。主要な結果は以下のとおりである。
1. A銀行・B銀行のいずれにおいても, 管理・監督者全体にみても, 各管理階層別にみても, 2回のサーベイのあいだに人事異動を経験しなかった非異動群では, 前年度と次年度のP得点およびM得点のあいだにかなりの相関がある (Table 1, 2)。
2. 異動群では前年度と次年度の得点の相関は低く, 非異動群とのあいだに有意な差がある (Table 1, 2)。
3. リーダーシップPM行動類型の変化についてみると, 異動群ではPM型からpm型への移行, pm型からPM型への移行をはじめとして, 異動前とは異なるリーダーシップ類型への移行が多くみられる (Table 3)。
4. 人事異動前と異動後1年目のリーダーシップ得点との相関は低く, 異動前と異動後2年目との相関も低い。一方, 異動後1年目と2年目の相関は高く, 異動前と異動後2年目との相関よりも有意に高い。すなわち, 人事異動によって生じるリーダーシップ行動の変化は一時的な変化ではなく, 少なくとも2年近く経過した時点においても継続している (Table 4)。
5. 同じ課へ異動した場合には, 別の課へ異動した場合よりも, P得点の相関は高い。すなわち, 人事異動前と異動後の職務内容の類似性が高い程, リーダーシップP行動の恒常性が高い (Table 5, 6)。
6. 同じ支点のなかで別の課へ異動した場合には, 他の支店の別の課へ異動した場合よりもM得点の相関が高い。すなわち, 同じ職場のなかで職務を異動する場合には, 他の職場へ異動する場合よりも, リーダーシップM行動の恒常性が高い (Table 5, 6)。
7. しかしながら, リーダーシップP得点の変化とM得点の変化は必ずしも独立なものではなく, 関連が認められる。

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