実験社会心理学研究
Online ISSN : 1348-6276
Print ISSN : 0387-7973
ISSN-L : 0387-7973
少数者影響過程の時系列的分析
吉山 尚裕
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 28 巻 1 号 p. 47-54

詳細
抄録

本研究は, 第一に少数者行動の一貫性が, 多数者に生起する少数者への同調行動の内面化に及ぼす効果を時系列的に検討し, 第二に多数者の少数者に対する属性認知 (自信と能力) の成立過程について吟味した。
被験者は男子大学生80名。5人集団が構成され10試行群と20試行群の2条件に割りあてられた。実験集団の1人はサクラ (少数者) であった。集団状況において, 被験者はスクリーン上に70cmの長さの線分を3.3m離れた位置から実際に構成するように教示された。そのとき, サクラは一貫して逸脱した長さ (85cm) を呈示した。試行終了後, 被験者は個人状況において線分を構成した。
結果は次の通りである。
1. 多数者は少数者側への同調行動を生起させたが, 時間経過に伴う内面化の進行は見いだされなかった。
2. 多数者は少数者に対して自らよりも“能力”を低く, “自信”を高く認知した。
3. 多数者の少数者に対する“自信”認知は, “能力”認知に比べ敏感ではなく, その成立に時間を必要とした。
4. また, 多数者は少数者との行動のズレが大きい場合に, 少数者の“自信”を自らよりも高く認知した。
少数者の行動一貫性および少数者と多数者の行動のズレは, 多数者の少数者に対する“自信”認知成立の決定因であると結論された。また, 実験結果から今後検討すべきいくつかの間題が討論された。

著者関連情報
© 日本グループ・ダイナミックス学会
前の記事 次の記事
feedback
Top