実験社会心理学研究
Online ISSN : 1348-6276
Print ISSN : 0387-7973
ISSN-L : 0387-7973
利他的行動の社会関係的基盤
高橋 伸幸山岸 俊男
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 36 巻 1 号 p. 1-11

詳細
抄録

本研究は, 利他的行動が特定の社会関係の中で果たす役割についての一連のコンピュータ・シミュレーションによる分析を通して, 特定の社会的状況のもとでは, 利他的に行動することが本人にとって有利な結果をもたらす可能性のあることを明らかにしている。本研究での分析の対象となっている利他的行動は, 集団内で成員が他の特定の成員に対して純粋に利他的に振る舞うかどうかを決定する (個人対集団場面ではなく, 個人対個人の関係) 状況での利他的行動である。このような状況での利他的行動が行為者本人にとって有利な結果をもたらす条件として本研究で明らかにされたのは, 集団の全員が下方OFT戦略を用いており, しかも下方OFT戦略の適用に際して「ほどよい」基準を用いている場合である。具体的には, 集団成員が利他的に行動する相手を選択するに際して, その相手が過去に少なくとも自分と同じくらい利他的に振る舞ってきた人間であるかどうかを決定基準として用いている場合には, より多くの他者に対して利他的に振る舞う方が成員の方がそうでない成員よりも, 結局はより大きな利益を得ることができることが, コンピュータ・シミュレーションを用いた分析により明らかにされた。

著者関連情報
© 日本グループ・ダイナミックス学会
次の記事
feedback
Top