実験社会心理学研究
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乳児院乳児の特徴的行動に関する身体論的考察
樂木 章子
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1997 年 37 巻 1 号 p. 1-13

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抄録

乳児院における長期の観察を通じて, 乳児院乳児に特徴的な3つの行動を見出した。すなわち, (1) 対面的に自分をあやしている保母がいるにもかからわず, 離れた場所で他の乳児をあやしている保母に対して生じるほほえみ, (2) そぼにいる保母に全く気づかぬかのように継続される没入的な探索行動, (3) 一般的には愛着の対象となるようなぬいぐるみに対する恐怖反応である。これら3つの行動について, 大澤 (1991a) の社会学的身体論に基づき考察した。具体的には, 上記3つの行動を, 乳児院乳児においては, (1) 母子の間で形成されるような間身体的連鎖が形成されにくいことから, 抑圧身体の擬制が遅延し, 過程身体の水準が支配的な時期が長期化すること, および, (2) 抑圧身体の擬制を回避する傾動が生じることの2点に起因するものとして説明した。

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