実験社会心理学研究
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自己卑下呈示を通じた直接的・間接的な適応促進効果の検討
吉田 綾乃浦 光博
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2003 年 42 巻 2 号 p. 120-130

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抄録

自己卑下呈示を通じて適応が促進される過程は2つある。ひとつは自己卑下呈示を行うことそれ自体によって適応が直接的に促進される過程であり, もうひとつは自己卑下的に呈示した内容を他者から「そんなことはない」と否定する反応を受け取ることによって, 間接的に適応が促進される過程である。このような影響過程は, 自己卑下呈示規範を内在化する程度によって調整されることが考えられる。自己卑下呈示に対して他者が返す“否定反応”は, 受け手がその呈示を“卑下”として受け取ったことを示している。自己卑下呈示規範内在化高群は, 自己卑下呈示を行う際に否定反応が返されることを当然視しているが, 低群はそのように見なしていない。そのため, 低群にとって自己卑下呈示に対して“否定反応”が返されることが重要であると考えられる。本研究では, 3ヶ月の期間をおいた縦断的な調査において, 自己卑下呈示規範内在化高群では直接的な適応促進効果が見れるのに対して, 低群では間接的な適応促進効果が見られるだろうと予測し, 検討を行った。仮説はおおむね支持された。考察では, 直接的・間接的な効果が, 対人間適応あるいは個人内適応のいずれに影響を及ぼしていたのかを明らかにする必要性について論じられた。

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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