日本教育工学会論文誌
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問題を比較することによる学習の支援環境(<特集>ICTを用いた科学技術教育)
中野 明平嶋 宗竹内 章
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2005 年 28 巻 3 号 p. 171-181

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抄録

実際の学校教育において,問題解決演習は,最も一般な学習の方法ではある.しかしながら,「問題を解くことによる学習」は,問題やその解き方に関する理解を深める唯一の方法というわけではない.例えば,「問題を作ってみること」も文章題やその解き方に関する理解を深める上で有効であることは,教育現場でも広く認知されているし,「問題同士を比較し検討してみる」ことで「同じ解法が適用できる問題同士の違い」や「異なった解法が適用される問題同士の違い」を把握することも十分有用な方法であると考えられている.しかし,問題を作らせる演習や問題同士を比較させる演習において,学生の学習活動を支援しようとする場合,学生の個々の回答に対する対応が必要性なことから,学習活動の意義に賛同していても実際の教育現場ではほとんど行われてこなかった.そこで,著者らは,和と差の2項演算を具体的な学習対象とし,和や差という基本の演算の概念理解を,問題同士を比較するという活動を通して行える学習の計算機支援環境POP.-Cの構築を行った.具体的には,和と差の2項演算で解決できる文章題同士の関係を外化する作業を介して,問題同士の比較を行わせる.計算機は,学習者の外化した問題間の関係を評価し,学習者自身が行った比較を学習者自身が気づき推敲するために,フィードバックを返す.この問題比較学習支援環境POP-Cは,少数ではあるが小学生に利用してもらい利用可能性に関する調査を行った.

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© 2005 日本教育工学会
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