言語的指示に従って行う動作の記憶は被験者実演課題(SPTs)によって研究されてきた.一般にSPTsの成績は,動作を伴わない言語課題(VTs)の成績を上回る(実演効果).また,VTsでは見られる年齢効果がSPTsでは見られないことが知られている.本研究ではSPTsにおける年齢効果の消失メカニズムを明らかにするため,成人若年者と年長者を対象に,系列位置曲線における実演効果と年齢効果について検討した.その結果,実演効果はリスト中間部,新近部で見られ,年齢効果はリスト中間部前半で見られた.これらの結果は,SPTsにおける年齢効果の消失が,動作の実演による項目特定情報の促進に由来することを示唆している.