2010 年 33 巻 3 号 p. 343-352
協調学習研究において,質問紙法や個人テストを用いて収集されたデータを対象として,統計的分析を行う研究が行われている.しかしながら学習者を小グループに分割した協調学習の場合において,学習者間での相互作用が学習につながるとする協調学習の理論的前提は,一般的に知られた統計的仮説検定手法における標本間の相互独立性の仮定と矛盾する.本稿ではクラスター化標本や階層的データを取り扱うための統計的分析手法を参照することで,協調学習の理論的関心と矛盾しない統計的分析手法を検討する.特に,集計データによる分析,ロバスト標準誤差を用いた分析,階層線形モデル,マルチレベル共分散構造分析を参照し,それぞれの特徴を検討する.