本研究は,バングラデシュ国における児童の思考力育成を目指した理数科改訂教科書の効果と課題を明らかにすることを目的とし,教員トレーニングを受けていない教員を対象として,授業の会話分析を行った.その結果として,教科書内容の口頭確認が多く,思考を促す探究的な質問や活動に併せて,思考を可視化する図表が利用されていないことが分かった.その原因として,フィールドワーク調査の結果から,教師が文化的背景により,図表の取り扱いに慣れておらず,利用を避けていることが明らかになった.更に,教師は答えが記入された市販の『ガイドブック』を用いて授業を進めることで,暗記型の授業のままになっていることが分かった.