2023 年 47 巻 3 号 p. 441-454
本研究は,教師行動と行動をとった意図や思考過程とを同時に対象とすることで,小学校教師の授業運営を教師が担任する学級の子どもの発達段階の観点から検討することを目的とする.教師6名を対象に,国語の授業中の教師の発話と発話の意図とを授業記録並びにインタビューによって明らかにした.分析の結果,教師がとった授業運営の行動として,教科内容を含む指導と含まない指導の2つのカテゴリが,集団授業,関係性や雰囲気,汎教科的能力の3つのカテゴリが意図として含まれていた.児童の発達段階に着目したところ,どの学年でも教科内容を含まない指導を通して,教室に一定の規律や秩序をもたらし集団授業を成立させることを重視していた.低学年担当の教師は教科内容とは独立した指導を通して規律や秩序を保つことが特に重視されていた.一方,高学年担当の教師は教科内容の指導を通して自主性や主体性を育む授業運営が特徴であった.