論文ID: 43119
本研究では,数学用語の理解を深める学習方略として,中学生の教科書活用を促す学習法講座を設計し,効果を検証した.具体的には,つまずいた際に教科書を見返すという学習方略の使用と「人に説明できる状態が理解した状態である」という理解観を促進すること,用語の定義と具体例に着目して教科書を読み,それらを説明する力を高めることを目標とした.講座では,説明に関するデモ実験や,教科書活用法の教授,教科書を用いた用語の定義と具体例の説明活動を行った.その結果,つまずきへの対処行動として「教科書を見返す」という回答が講座前後で増加したが,遅延調査では非受講群との群間差は認められなかった.また,人に説明できることを理解と捉える生徒が増加し,遅延調査でも,受講群の生徒は説明できることを理解の姿と捉えていた.遅延テストでは,教科書読解後の用語説明問題における受講群の得点が,非受講群に比べ高いことが示された.