日本食品化学学会誌
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2種のアカネ色素のラットを用いた中期多臓器発癌性試験での非発癌促進作用ないし非発癌性
萩原 昭裕河部 真弓田中 光小久保 百合子佐野 真士玉野 静光門田 忠臣中村 幹雄今井田 克己
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1997 年 4 巻 2 号 p. 99-106

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抄録

アカネ科セイヨウアカネ(Rubia tinctorum L.)の根より抽出される天然のアカネ色素(Madder color)のラット中期多臓器発癌性試験法による発癌性評価を実施した。6週齢のF344系雄ラット190匹を用い、複数の臓器に発癌イニシエーションを行う目的で実験開始時にN-nitrosodiethylamine (100mg/kg)を単回腹腔内投与し、N-methyl-N-nitrosourea (20mg/kg)を第1および2週に4回腹腔内投与し、N-bis (2-hydroxypropyl) nitrosamineを0.1%の濃度で飲料水に混じて第3および4週に投与した(DMD処置)。DMD処置後、アカネ色素(サンエローAK)とアカネ色素製品(SRレッドRTM)(各々2.5%と5.0%)、非発癌性のキノン系色素であるコチニール色素製品(陰性対照物質)P. SAN RED No. 1 (5.0%)および陽性対照物質フェノバルビタール(0.05%)をそれぞれ混餌にて第5-20週の16週間投与した。DMD処置後、基礎食のみで飼育したものを対照群とした。全経過20週で屠殺剖検し、全身諸臓器を病理組織学的に検索した。肝臓については免疫組織学的に胎盤型glutathione S-transferase(GST-P)染色を施し、その陽性細胞巣を定量的に解析した。被験物質投与に起因すると考えられる死亡例や一般症例はみられず、体重にも影響を認めなかった。SRレッドRTMの5.0%投与群には、摂水量の高値傾向を認めた。DMD処置後にアカネ色素(サンエローAK)とアカネ色素製品(SRレッドRTM)を投与した各群の全身諸臓器に種々の過形成および腫瘍性病変を観察したが、いずれも対照群との間に有意な差はみられなかった。また、肝GST-P陽性細胞巣の定量値においても対照群と比較して差異を認めなかった。2種のアカネ色素サンエローAKとSRレッドRTMは、本試験法においていずれの臓器においても発癌促進作用を示さなかった。従って、アカネ色素には発癌促進作用ないし発癌性のないことが強く示唆された。

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© 1997 日本食品化学学会
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