抄録
岐阜県の豪・多雪地帯の広葉樹が混交するスギ不成績造林地の樹高階分布と構成樹種の樹高成長過程を解析し,不成績造林地の取扱い方法を検討した。調査地の林齢は15〜31年で,広葉樹は下刈りあるいは除伐後に侵入していた。スギは,全調査地で上層に出現するとともに,広い樹高階にわたって存在した。高木性広葉樹の樹高はスギ上層木と同じかそれよりも低かった。高木性広葉樹には,用材として有用な樹種が多かった。樹高成長速度はウダイカンバやシラカンバで大きく,ミズメやホオノキで中庸,スギ上層木やミズナラ,ブナで小さく,スギ下層木や小高木・低木性広葉樹ではさらに小さかった。樹種ごとの樹高成長速度とスギ植栽後の保育は,不成績造林地の将来の林型に対して大きな影響力を持つ要因であると考えられた。特に,除伐は森林の発達に大きな影響を及ぼすと考えられたことから,除伐の時期に不成績化を判定し,不成績造林地では除伐を中止することを提案した。その際の判定基準は,スギの立木密度と上層木の平均樹高に置いた。不成績造林地に対しては,有用広葉樹上層木の立木密度からみて広葉樹経済林の成立の可能性が高いときは整理伐による改良を行うことを提案した。