エゾシカの時空間的な行動特性はエゾシカの管理において重要な情報であり,自然植生の多い地域で調べられているが,牧草地など人間が利用する土地の多い地域での知見は多くない。本研究は,エゾシカの日周活動および空間分布の季節変化を明らかにすることを目的として,2010年から2014年に北海道東部の牧草地と隣接する森林においてカメラトラップ,ライトセンサス,目撃調査を行った。エゾシカの日周活動は日没・日の出の時間帯にピークが認められ,日中の活動性は春季に比べて秋季が低かった。日中の空間分布は,春季と夏季では牧草地に接する林縁で密度が高く,夏季よりも春季で特に高かった。これは,夏季にはエゾシカの利用場所が分散していることを示しているのかもしれない。日没後の空間分布は,春季と秋季に牧草地に接する林縁で密度が高かった。また,エゾシカは自動車の通行などの人間活動を避けるために,交通量の少ない道路が通る牧草地に接する研究林東側の林縁を選択的に利用していると推測された。