2007 年 22 巻 3 号 p. 121-132
本研究では,ネットワーク分析を用いて流域内の各地域における道路網の時系列的・階層的特性を明らかにすることを目的とした。対象地域には,豊川を中心とする愛知県東三河森林計画区の上流から東栄町と設楽町,中流から鳳来町(現在は新城市に合併),下流から新城市を選択し,これら4市町の1990年と1999年におけるネットワーク分析の各指標の階層的および時系列的な変化を比較した。さらに,ネットワークの連結性に関する指標の目標値を検討し,それを達成するための最低路網密度の算出を試みた。その結果,10年間に開設された林道は循環路を多く形成し,ネットワークの発達に大きく貢献していたが,一方作業道は森林全域に対する到達距離の短縮や循環路数の増加の効果は認められるものの,ネットワークの発達にはほとんど貢献していないことが明らかとなった。また,本研究で用いた指標は,概ね下流から上流に向かって変化し,流域内の地理的位置関係に対応した道路網のネットワーク特性が確認された。さらに,α指数の目標値がα=20%程度となることを導いて,それを達成するためには,山間地域では最低4m/ha前後の連絡する道路が必要であると算出された。