2013 年 28 巻 4 号 p. 237-244
利用可能な木質バイオマス資源量をより現実に近い形で予測するため,長伐期施業と短伐期施業の2つのシナリオを両立させたシミュレーション手法を提案した。このシミュレーション手法を用いて,典型的な山村地域である愛知県豊田市稲武地区を対象に,主伐・間伐による利用可能な木質バイオマス資源量を100年先まで予測した。その結果,主伐・間伐による供給可能な用材量,発生する土場残材量,それを用いて生成されるバイオマス液化燃料(BTL)は,道路から100m以内を基準に考えると200m以内では約3倍,300m以内では約5倍になった。また,短伐期施業の輪伐期については,道路から100m以内の場合は70年伐期で,200m以内と300m以内ともに60年伐期で利用可能な木質バイオマス資源量は最も大きくなった。稲武地区における公的機関と一般家庭の軽油と灯油の年間消費量でBTL生成量を評価したところ,公的機関に安定供給するためには道路から200m以内を対象に短伐期施業の輪伐期を60年とするか,道路から300m以内に対象を広げる必要があり,一般家庭に安定供給するためには道路から200m以内を対象とする必要があることが明らかになった。