森林利用学会誌
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速報
車両系作業システムによる漸伐作業における終伐時の労働生産性
—長野県におけるヒノキ林の事例—
大塚 大斎藤 仁志守口 海植木 達人
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2016 年 31 巻 2 号 p. 79-83

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抄録

天然更新を利用する森林作業法のなかでも,漸伐作業は比較的容易に誘導できるとされている。世代交代を図る後伐の段階では,下層木に損傷が発生するが,複層林施業を対象として,損傷を軽減する作業方法の検討など,収穫技術に関する知見の集積がみられる。しかしながら,経営において大きな問題となる作業コストを取り上げた報告は少なく,複層林施業では通常の皆伐施業と比べてどの程度山林所有者の負担が増加するか明らかでない。そこで,本研究では,今日普及している車両系作業システムによる終伐作業を取り上げ,時間観測から労働生産性を算出し,主伐事例との比較を行うことで,下層木による作業性の低下を明らかにした。その結果,終伐作業の労働生産性は6.26m³/人日と低い値となり,伐出コストも9,771円/m³ と高額になった。一方で,下層木は終伐を通して林地面積のおよそ30%で保残され,再造林にかかる費用の軽減が期待された。木材販売価格と造林費の省力化を加味して経営費用を試算した結果,漸伐作業のそれは皆伐施業と比較しても著しく大きいものではないことが示唆された。

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