森林利用学会誌
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速報
素材販売実績に基づく皆伐再造林の採算性分析:栃木県宇都宮市の事例
仲畑 力山本 嵩久斎藤 仁志有賀 一広
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2018 年 33 巻 1 号 p. 59-66

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抄録

本研究では,2014 ~ 2016 年度に栃木県宇都宮市で行われた 皆伐の素材販売実績を整理し,その結果を基に素材の販売先の選択や中間土場の活用を踏まえた販売方法 の違いが,皆伐から下刈 5 年目までの再造林にかかる採算性に与える影響について分析した。その結果,製 材工場などの川中業者に直送販売された直送材は,実績の多い調査地でも一般材のうち 14.7% と少なかった が,共販所で公売された一般材からその規格に適した丸太を集計すると,山土場での検知や選別の効率化 が課題ではあるが,30.6 ~ 44.1% まで増加する試算となった。これを中間土場まで運搬し,川中業者に引き 渡した場合,2014 年度の調査地では,共販所の素材価格の変動などにより 9.0 千円 / m3 と低かった平均販 売単価が 10.5 千円 / m3 まで上がり,運搬費などの販売経費はすべての調査地で 0.3 ~ 0.5 千円 / m3 低減し たため,2015,2016 年度は売上と補助金から経費を差し引いた利益の増加分が 21.7,13.7 万円 /ha,採算性 が低かった2014年度では64.5万円/haの増加となり,採算性が大幅に改善される結果となった。これより, 川中業者との協定販売により素材価格や出材量の長期的な安定性を図ることが,皆伐再造林を推進するた めに重要であることが示唆された。

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