森林利用学会誌
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論文
既設路網の高規格化による基幹路網の整備の可能性
―拡幅シミュレーションによる検討―
渡部 優斎藤 仁志白澤 紘明植木 達人
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2022 年 37 巻 1 号 論文ID: 37.17

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抄録

基幹路網整備を加速化させる一方策として,既設路網の高規格化が挙げられるが,高規格化の物理的・経済的な難易は,既設路網の立地と構造の条件によって異なるため,既設路網の高規格化により基幹路網がどの程度整備可能であるかは明らかでない。そこで本研究では,既設路網の高規格化による基幹路網の整備の可能性を,拡幅の観点から明らかにすることを目的とした。長野県伊那市の民有林に整備された作業道,2・3 級林道を対象に,既設路網の全幅員を3.5 m および4.0 m に拡幅するシミュレーションにより,路線ごとに拡幅の物理的可否の判定と拡幅単価の試算を行った。その結果,設定条件下で拡幅可能と判定された路線の総延長が既設低規格路網の総延長に占める割合は,全幅員3.5 m への拡幅の場合は89.0% であり,全幅員4.0 m への拡幅の場合は70.1% であった。路線長の重み付きの平均拡幅単価は全幅員3.5 m への拡幅の場合は1,787 円/m であり,全幅員4.0 m への拡幅の場合は5,537 円/m であった。仮に対象地において,全幅員3.5 m へ拡幅可能なすべての既設路網を拡幅した場合,基幹路網の目標整備水準の達成に必要な整備量の36% を拡幅により賄える可能性が示された。

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