1995 年 10 巻 3 号 p. 187-193
東部タイにおいて、木材伐採禁止法令が制定された前後で森林破壊が見られた地区の位置および面積について,地理情報システム(GIS)を用いた分析を行った。タイ王国政府は,木材伐採が森林破壊の原因であるとして,1989年に木材伐採の全面禁止地域を定めており,本研究対象地域もその一部となっている。本研究では異なる6時期の森林-非森林地図をもとに,ベクター型GISを用いオーバーレイ手法により分析を行った。分析の結果,1973年次の森林は,1973〜1982年,1982〜1989年(伐採禁止法令制定前)の間にそれぞれ5.6%/年,1.8%/年,1989〜1991年(伐採禁止法令制定後)の間に2.8%/年の速度で非森林となっていることが確認できた。また,森林が非森林となったのは傾斜の緩やかな平坦な土地で,しかも道路から比較的近い土地であることが明らかとなった。このことは1989年の木材伐採禁止法令制定以後も森林破壊に歯止めがかかっていないことを物語っている。