森林利用研究会誌
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総説
森林保全と木材生産と基盤整備
神崎 康一
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1991 年 6 巻 2 号 p. 1-10

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抄録

Forest Engineeringという研究分野で対象になる主たる道具は,道路と機械・器具,それにそれらをどう運営してゆくかということを効果的に決めるためのソフトウェアである。この場合のソフトウェアとは単に計算プログラムと言うことだけではなく,もっと一般的な広い意味で言っているつもりである。そうして,その直接の研究目標は,まず,3K,つまり,「キタナイ,キツイ,キケン」それに近頃は「カッコワルイ」を加えて4Kを退治して,林業の仕事を良い方の3K,「キレイ,カルイ,カッコイイ」ものに変えることである。そして,それはさらに,森林の生物生産機能を効率的に利用して,人間の要求に適合した林産物を生産し,永続的に供給しつづけるという林業目的につながったものである。したがって,3Kさえ退治できれば,何でも良いということではない。そこにはおのずから方向性がある。ここで研究されたものは,企業としての林業が,経営利潤を追求しようとするときに,その経済原則にそぐわないものであれば,当然,採用されえない。また,林業生産は基本的に生物生産であるから,その場であり,環境であるところの森林自体の状態を改良・保全するのでなければ,品質の良い林産物を生産しつづけることはできない。経済的な要求にどこまで応えることができるかということと,森林環境をどこまで良くすることができるかは,言わば,その技術の評価尺度であり,必要条件である。以上のような枠組みの中で,技術というものは考えられるべきものであろうと思う。したがって,林業をまともに考えるのであれば,その技術は常に森林を保全するものでなければ,それは林業技術とは言えない。しかしながら,林業機械開発にしても,道路開設技術にしても,その用途が収穫用であるとのみ考えられ,皆伐一斉造林というきわめて単純な更新方法のみが,いつも想定されてしまうことによって,一面的,短期的な経済性の追求が行われることになり,本来の林業生産のあるべき姿とは全く反対のことをやってしまっているのではないかと思われる場合もあることは否めない。林業生産場面における基本的な施設は,平地林である場合でも,急峻な山地林である場合でも,現代においては自動車道による路網である。路網は,保続的な経営を行う場合,集約な育林を行う場合には不可欠である。したがって,路網は,収穫より育林や管理業務に対してこそより根本的な重要性を持っている。路網が十分に整備されたときに初めて,生物生産過程を養生することを基本とした林業経営が実現されるように思われる。結局,育林と収穫を一体のものとして捉えた意識を人々に導入すること自体が,路網のもつ重要な機能であると考えられる。

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© 1991 森林利用学会
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