森林計画学会誌
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論文
森林空間がもたらす騒音に対する音の物理的減衰効果
宮城 昭博美濃羽 靖森 有花金田 茜川村 真央
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2021 年 54 巻 2 号 p. 93-103

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抄録

宮城昭博・美濃羽靖・森有花・金田茜・川村真央:森林空間がもたらす騒音に対する音の物理的減衰効果,森林計画誌54:93~103,2021 本研究では,森林空間がもたらす騒音に対する音の物理的減衰効果について音響実験を行い検証した。京都市左京区大見地区の落葉広葉樹林内に10m×50mの音響実験区域を設定した。8通りのサイン波(125,250,500,1,000,2,000,4,000,5,000,8,000Hz)およびホワイトノイズの計9音を発振点から2種類の音の大きさ(80および95dB)で発振させ,五つの測定地点で地上高1.3m および5.0m地点の音を録音し音圧レベルの解析を行った。音響実験は落葉前後で2回行い,実験区内の毎木調査から作成した立木位置図,樹冠投影図等を用いて樹冠内に占める枝葉の占有体積を算出した。その結果,各周波数帯における理論値から測定値の音圧レベルを引いた値 (減衰量と呼ぶ) は多くのケースおいて正の値となった。発振点とマイクの間の枝葉の占有体積と減衰量とには高い正の相関が見られた。落葉前後における減衰量は全体としてはほとんど変わらなかったが,周波数別に見ると発振音の大きさ95dB において落葉前の減衰量が大きい結果を示したことから,樹葉の有無は音の減衰効果に大きく関与していることが示唆された。また,音の減衰効果は低周波数帯において最も高く,順に中周波数帯,高周波数帯といった傾向が示唆された。本論文によって森林による騒音に対する物理的減衰効果に影響する要素について新しい知見が得られた。

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