日本森林学会誌
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論文
立木の外観指標と選木者の選木経験が天然林択伐施業の選木意思決定に及ぼす影響
美濃羽 靖尾張 敏章中島 徹犬飼 浩
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2018 年 100 巻 2 号 p. 37-46

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抄録

 天然林択伐施業において収穫木の選定(選木)は重要な技術である。本研究では,立木の外観指標と選木者の選木経験が選木意思決定や立木評価に及ぼす影響について解析した。解析には東京大学北海道演習林の天然林施業試験地内に成立する立木184本を対象とした選木試験結果を用いた。選木試験ではまず,同演習林の技術職員22名が各自調査対象木から収穫木を選定し,立木の形質や健全性等の選木意思決定に関わる四つの基準と47の外観指標を用いて選定した収穫木の評価を行った。次に,勤続年数20年以上の熟練技術職員2名が最終的に収穫木を決定し,全ての立木の外観指標を判定した。本研究では,後者を参照値とし,技術職員22名の選木結果と比較した。収穫木の本数・材積では正確度と一致度を,立木の外観指標では見誤り・見落とし回数および正解数を,それぞれ算出した。解析の結果,1) 選木者が収穫調査に関わった経験年数と選木の一致度との間に正の相関が見られ,2) 参照値に見られた立木の外観指標の多くは,腐れなどの材質の欠陥に関わるものであり,3)選木者は立木の外観指標を見誤るよりもより多く見落としする傾向が見られた。

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© 2018 一般社団法人 日本森林学会
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