日本森林学会誌
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防除実施マツ林におけるマツ材線虫病潜在感染木の確認と樹幹注入剤による発症抑制の検証
加藤 徹劔持 章山田 祐記子二井 一禎
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2019 年 101 巻 1 号 p. 46-51

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抄録

防除対策が適切に実施されているマツ林で発生するマツ材線虫病被害について,その原因が潜在感染木の存在にあることを確かめるために調査し,潜在感染木の発症を阻止する方法として,殺線虫剤の樹幹注入処理試験を行った。静岡県三保半島先端にあるマツ林に樹幹注入処理区と無処理区を設け,クロマツの生立木と切株の位置を測量し,各立木の3カ所でマツノザイセンチュウDNAの検出を行った。その後,2週間に1度樹脂滲出量等を1年間調査した。その結果,同種DNAの検出木は全体の33%であった。枯死木には新鮮な後食痕がなかったことからそれらは潜在感染木で,感染の1,2年後に発症・枯死したと考えられる。事前に潜在感染木の特定ができなかったが,樹幹注入処理区では枯死木は発生せず,無処理区では有意に多い6本(19%)の潜在感染木と考えられるクロマツが枯死したことから,潜在感染木を含むマツ林で樹幹注入に発症阻止効果があることが示唆された。

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© 2019 一般社団法人 日本森林学会
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