2020 年 102 巻 2 号 p. 127-132
2019年4月に森林経営管理法が創設され,市町村を中心とした新たな森林管理の枠組みが設けられ,そのための費用が森林環境税の導入に先駆けて同年度から市町村に交付される。その地方譲与税としての森林環境譲与税の自治体への配分については,私有林人工林率のみならず,人口も考慮されるため,都市部にも一定の配分がなされる。都市部では木材利用の促進といった施策が進められる傾向にあるが,本来の制度趣旨に沿うかたちで,都市-農山村連携を促すことも意図されている。本稿では,その萌芽的事例として,東京都豊島区と埼玉県秩父市の事例を対象として,連携の経緯と課題,可能性について考察を行った。結果,両自治体の姉妹都市としてのこれまでの経験や,秩父市における周辺自治体との広域連携を含む林政の展開が,環境譲与税を活用した都市-農山村連携のコンテクストとなっており,環境譲与税のさらなる活用に向けた県と市の人事交流による人的資源の補完等の可能性も把握された。