日本森林学会誌
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論文
コシアブラ樹体内における福島第一原子力発電所事故由来137Cs分布と葉の高濃度化の要因について
小川 秀樹 櫻井 哲史手代木 徳弘吉田 博久
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2021 年 103 巻 3 号 p. 192-199

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抄録

コシアブラは人気の高い山菜の一つであるが,山菜類の中でも137Cs濃度が高いことが知られている。しかしながら,葉,幹,主根,側根といった樹体部位別ごとの137Cs分布を捉えた研究はこれまでほとんど報告されてこなかった。本研究は,部位別の137Cs分布や重量比に着目し,統計解析により,コシアブラの葉の高濃度化の要因について検討することを目的とした。2016年と2017年の春期と秋期に,福島県内に自生する小さい個体(樹高が2 m以下)のコシアブラを採取した。各部位への137Cs分布割合を,各部位の137Cs濃度と重量から算出した。春期には樹体全体に含まれる137Cs蓄積量の約50%が葉に分布した。また,いずれの採取時期においても幹より地下部に多くの137Csが分布していた。さらに,線形回帰モデルの結果,側根と幹および主根の内皮の137Cs濃度には高い正の相関が認められた。これらの結果から,137Csは内皮を通じて主根や幹へと移動した可能性が示唆された。コシアブラの葉が高濃度化する要因については,既往研究で指摘されてきた浅根性という特徴に加えて,地下部に蓄えられた137Csの内皮を通じた転流による可能性が考えられる。

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