日本森林学会誌
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論文
戦後の高等学校の専門教育における林産加工の教育の変化と課題
井上 真理子 大石 康彦
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電子付録

2022 年 104 巻 1 号 p. 18-30

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抄録

高等学校の森林・林業教育について検討するために,林産加工の内容に着目し,戦後の教育の変化をもとに教育内容と特徴の分析を行った。調査対象は,森林・林業の専門学科を含む農業教育と,あわせて工業教育とした。「学習指導要領」と教科書を分析した結果,教科「農業」では,「林産加工」関連科目が1科目以上設定されていた。教育目標は,合理的な生産や利用を図ることから,林産物の加工や多様な利用に変化したが,教育内容は主に木材産業に関わる知識や技能に関するものだった。教育内容には,5分類9項目(1)概論:意義・動向,2)木材・材料:構造・性質・用途,3)木材加工:製材・乾燥,工作,塗装・接着・木質材料,4)林産製造:木炭・バイオマス,紙・パルプ,5)特用林産:きのこ,特殊林産・山菜)があった。工業教育では,工業の材料の木材として,家具など工芸(インテリア)での木材加工,建築での木質構造がみられた。近年では,環境の意義から木の教育内容が増えていた。林産加工の教育の特徴には,生産から利用を通した循環資源の活用を学べることがあり,今後の課題には,専門教育の基礎・基本としての林産加工教育の内容の精査が挙げられた。

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© 2022 一般社団法人 日本森林学会

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