日本森林学会誌
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論文
ヒノキ人工林における下層植生の動態と表土流亡の抑止に及ぼす列状間伐と採食圧の影響
渡邉 仁志 片桐 奈々宇敷 京介岡本 卓也
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2025 年 107 巻 11-12 号 p. 239-246

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抄録

急傾斜地のヒノキ人工林において,列状間伐とニホンジカによる高い採食圧が,下層植生の動態と表土流亡の抑止に及ぼす影響を,7年間にわたり調査した。52年生林分を2伐4残(または5残)で伐採し,防鹿柵の有無(柵内/柵外)と列の種類(伐列/残列)を組み合わせた4条件で,光条件の変化,下層植生の推移,および伐採後7年目の地表面の状態を評価した。伐採後の林内の相対照度は,すべての調査区で植生発達に十分なレベルにあった。下層植生量は,柵内の伐列および残列の両列では,調査期間内を通じて増加した一方,柵外の両列では,伐採後の2年間は微増したものの,その後は変化量が小さかった。柵外の両列では,採食圧と表土流亡によってシカの不嗜好性種を含む多くの下層植生の定着が妨げられたため,変化量に列間の差異は認められなかった。また,表土流亡の程度を間接的に示す土壌侵食危険度指数は,植被率やリター被覆率が高い傾向にあった柵内伐列においてのみ,有意に低かった。これらの結果から,急傾斜地における列状間伐は,下層植生の回復および表土流亡の抑止に有効であるものの,採食圧が高い場合には,その効果が限定的になる可能性が示唆された。

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